2026/06/05

造られたもの達

 

            - イメージ画像: berkwz / Tumblr 様 -



              

アノーマリーのただ中で、私は思わず呟いていた。

『可愛い』と。


​だが、すぐに冷徹な理性が私の脳裏を叩く。忘れるな、この目の前の生き物はゾーンが生み出した紛れもない『ミュータント』だ。過酷な放射能と致死的な環境に適応し、独自の進化(あるいは退化)を遂げた肉食獣。油断した次の瞬間、その牙は私の喉笛を容赦なく引き裂くだろう。

​それでも、このおぞましくも哀れな獣が私に無警戒に擦り寄ってきたなら、話は別だ。

ボロボロの防護グローブ越しでも構わない。私は思わず、その異常な毛並みへと手を伸ばしてしまう。生態系を乱す歪んだ存在であろうと、アーティファクトの研究対象であろうと、私の目の前で不器用に体温を放っているのは、確かに息づく『命』なのだから。

​おそらく、この妙な人懐こさは、Zoneという地獄の中で彼らが生き残るために刻んだ記憶だ。

ストーカーたちとの血で血を洗う敵対、そして稀に訪れる、奇妙な『共生』。その歴史の中で彼らは学習したのだ。一時的に敵意を押し殺すことが、どれほどの利益(肉の一片や、夜露をしのぐ焚き火の暖かさ)をもたらすかを。

これは単なる野生の本能ではない。Zoneという不条理な世界で、彼らが後天的に獲得した、歪で、しかし見事な『処世術』なのだ。